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バリバリ通信

大歩危峡を遊ぶ

掲載日:2013年6月

渓谷に伝わる妖怪伝説
(徳島県三好市山城町)


大歩危峡観光遊覧船
砂岩が変成してできた地層が曲がり、長い年月をかけて浸食されてできた大歩危峡。この雄大な景色の中、約4kmを30分ほどかけて遊覧する。大人1,050円。


ボンネットバス
レストラン大歩危峡まんなかにて。
祖谷峡への定期観光用。

 JR土讃線の特急列車に乗っていると観光案内の車内放送が流れることがある。橋を境に上流側が大歩危、下流側が小歩危、土讃線随一の車窓です、と。確かに川の両岸にびっしり並んだ奇岩・怪岩は印象深く、飽きることなく眺めていられそうなほどだ。大歩危と書いて「おおぼけ」、小歩危と書いて「こぼけ」と読む。四国に住んでいるからこそ聞き慣れているものの、全国的に見れば難読地名のひとつ。その由来は断崖を意味する古語だそうで、この辺りを歩くときは大股でも小股でも危ないから、ということに転じたらしい。

 大歩危観光の手始めに、目玉とも言える観光遊覧船に乗ってみた。発着場となる「レストラン大歩危峡まんなか」から河原へとずんずん下る。ここから下流側約2キロメートルは比較的流れが緩やか。だからこそ遊覧船の運航ができるのだが、水深15メートルほどの場所もあり、見た目より水中の流れはずっと速いそうだ。このため、乗船客は救命胴衣を着用しなければならない。実は大歩危峡での遊泳は原則禁止で、川に入る際はライフジャケット着用が義務づけられている。乗船時間は約30分。天気さえ良ければ揺れもほとんどなく、川面を渡る風を感じながら、大きな岩を縫っての快適な船旅が楽しめる。ただし、乗る前にずんずん下ったということは、下船後には国道の高さまでの過酷な登りが待っているのをお忘れなく。


ラフティング
小歩危峡は日本でも屈指のラフティングコー ス。モンベル・アウトドア・チャレンジ(MOC) では高校生以上対象のラフティング小歩危ロ ングコースが9,000円~(季節により変動)。

 遊覧船の折り返し地点から下流域では少し川が狭まり、見るからに流れが速そうな瀬が増えた。と同時に色とりどりのカヌーやラフト(筏いかだ)を目にするようになる。四国のウォータースポーツのメッカである吉野川流域では現在、大小30ほどの店がラフティングツアーを催行しているそうだ。中でも最大級なのがアウトドア用品メーカーのモンベルが運営するモンベル・アウトドア・チャレンジ(MOC)。ギフトショップやコンビニエンスストア、徳島らーめん、祖谷そばの店が連なるリバーステーション「ウエスト・ウエスト」の一角にある。日本の中でも激流と言われる小歩危峡でのラフティングは高校生以上が対象となるが、少し上流の大歩危峡や周辺域ではファミリー向けのプログラムも用意されている。

 国道32号のトンネル、大歩危洞門では歩行者用通路はトンネルの外側に迂回する形になる。ここで眼前に飛び込んでくるのが冒頭の橋、JR・第二吉野川橋梁だ。阿波池田から大歩危までを運行する臨時列車「大歩危トロッコ」に乗車すると、この区間を最徐行運転してくれる。橋上で停車するサービスもあっておすすめしたかったのだが、残念ながら今夏の営業運転は行われず、秋までお休み。橋の小歩危駅寄りには大歩危温泉サンリバー大歩危があり、日帰り入浴も楽しめる(500円)。展望大浴場からの眺めは絶景。


リバーステーション West-West
アウトドアメーカーmont-bell(モンベル)の直営店、「モンベルクラブ大歩危店」をはじめ、「セブンイレブン」、土産がそろう「ギフトショップWEST」、徳島らーめん「にし利」、それに古民家を改造した祖谷そばの「もみじ亭」が並ぶドライブイン。毎年行われるORF(大歩危リバーフェスティバル)のメイン会場でもある。今年の開催は10月5日(土)6(日)。河原へ下りる有料(100円)の遊歩道も完備。
 

大歩危トロッコ
阿波池田と大歩危の間約22kmをおよそ50分かけて走る。窓はなく、心地よい風に吹かれながらダイナミックな車窓風景が楽しめる。暑い日でもトンネルの中は肌寒い。乗車時は1枚羽織るものを持参すると便利かも。トロッコは全車指定席(500円)。運転日は要問い合わせ。

 流れの速い小歩危峡の中でも最も激流と言われるのが鮎戸ノ瀬(あどのせ)。遡上する鮎も一休みしてからでないと登り切れない、ということから名前が付けられたそうだが、川を下るカヌーやラフトにとっても最大の難所、つまり見せ場となる。付近の上空には歩行者専用吊り橋の国政橋が架けられ、こちらもスリル満点。床板がグレーチングで川面が丸見えなのだ。小歩危駅近くの赤川橋(こちらは木の床板間がそれぞれ5センチメートルほど空いている)ともども渡ってみたい。


藤川谷の児啼爺石像
夜道で赤ん坊の泣き声に似た声を発し、通りすがりの人が不憫に思って抱き上げると石のように重く、離そうとしても抱きついて離れない老人の姿をした妖怪・コナキジジ。人の命を奪うこともあったそうだが、「ゲゲゲの鬼太郎」では正義の妖怪・こなきじじいとして有名になった。ほかにヤギョウサン・クビキレウマ・タカニュウドウも山城町の妖怪として妖怪名彙で紹介されていることから、藤川谷には児啼爺以外にも数多くの妖怪像が設置されている。

 さて大歩危峡が妖怪の里と言われているのはご存じだろうか。この地域は民俗学者・柳田國男氏の「妖怪名彙」で児啼爺(コナキジジ)のふるさととされ、数々の伝承が残る。妖怪こなきじじいは水木しげる氏の「ゲゲゲの鬼太郎」で名脇役として一躍脚光を浴びた。2001年には藤川谷に児啼爺の石像が建てられている。台座に刻まれた「児啼爺」の文字は水木氏の直筆。傍らには妖怪研究家としても知られる小説家の京極夏彦氏が寄せた碑文もある。近くには湧き水もあり、わざわざ車で汲みに来る地元の方も多い。同年から毎年秋には藤の里公園を中心とした藤川谷一帯で、妖怪まつりも行われるようになった。妖怪たちがパレードする様子は圧巻。また、道の駅大歩危・ラピス大歩危には妖怪屋敷があり、こちらでは通年妖怪たちに出会える。入館料は石の博物館とセットで500円。


道の駅大歩危・ラピス大歩危
オープンカフェやミュージアムショップが並ぶ道の駅。渓谷を臨む絶好の位置には無料の足湯も(土日祝のみ)。
砂質片岩にとどまらず、この地域では礫(れき)、つまり石が変成してできた礫質片岩も散見でき、徳島県の天然記念物に指定されている。作り替えられた岩石の中にある、昔の石を調べることで地球の成り立ちを知ることができることから、地質学の分野でも大歩危峡は国際的に名高い。
こうした石を展示した石の博物館が1996(平成8)年にラピス大歩危としてオープン、2008(平成20)年に道の駅に登録された。妖怪屋敷のオープンは2010(平成22)年。ちなみに「山城・大歩危妖怪村」は水木しげる氏を会長とする世界妖怪協会から、後世に残すべき怪遺産に認定されている。は全車指定席(500円)。運転日は要問い合わせ。

大歩危土産の数々
三好市は茶どころとしても有名。妖怪や渓谷、祖谷そばと絡めた多彩な商品展開。左から順にまんなか限定販売の「大歩危だんご」、West-West 限定販売の「ぼけませんべい」、アワグラスの梅酒「UMEKOKORO」、司菊酒造の「瓶囲い低温貯蔵大歩危小歩危」、地元・山城茶業組合の「妖怪茶」。
 

大歩危峡までの交通

【JRで】

大歩危駅まで
阿波池田駅から 約20分(特急)
高知駅から 約50分(特急)

【自動車で】

徳島自動車道・井川池田I.C.または
高知自動車道・大豊I.C. からそれぞれ約30分
 

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