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バリバリ通信

久礼の鰹を喰らう

掲載日:2013年3月

本場を味わう鰹乃國
(高知県高岡郡中土佐町)

 かつて「土佐の一本釣り」という漫画があった。主人公の純平がカツオ船の漁師として、そして男として立派に成長していく物語。その舞台となった中土佐町久礼では春先の上りカツオから秋口の下りカツオまで、海が荒れた時を除いてほぼ毎日、男衆による一本釣りで新鮮なカツオが水揚げされる。それを浜で待つおかみさん方がさばき売る、まさにカツオを軸にした生活が展開されている。中土佐町が「鰹乃國」と呼ばれる所以であろう。そのカツオに感謝の気持ちを込めて、久礼の港では毎年5月の第3日曜日に「かつお祭」を開催している。カツオのタタキやかつおめしなどのカツオ料理を食べられるほか、一本釣り競争やところてんの早食い競争など、体感できるイベントが満載だ。県外からも多くの人が訪れ、毎年賑わいを見せている。今年は5月19日。地域の人たちが総出で準備する中土佐・久礼流のおもてなしをぜひ、体験して欲しい。

 

 久礼へは高知自動車道・須崎道路を中土佐インターチェンジで降り、国道56号線を経由して高知市内から約1時間。土讃線の土佐久礼駅はその国道を少し海側に下ったところにある。両側をトンネルに挟まれたホーム1本の小さな駅だ。それでも特急を含むすべての列車が停車する。駅から最初の大きな交差点右手にある消防署(高幡消防組合中土佐分署)では、観光客に限り自転車を無料で貸してくれる。狭い路地の多い久礼の町では重宝するはず。ただし台数は多くない。このまま県道320号線を道なりに進めば土佐十景にも数えられる久礼湾のシンボル、双名島。島へは歩いて渡れるが、灯台へ登る石段は途中で崩落していた。

 

 今度は海岸沿いに南へ戻ると、ほどなく見えてくるのが青と白のツートンで、2階がガラス張りになった建物。これが「風工房」で、苺の生産農家が運営する、完熟生苺を使ったケーキ屋さんだ。鰹乃國らしく、苺の肥料には町全体で大量に消費されるカツオのアラを使っているそう。2階は喫茶コーナーになっており、久礼湾や双名島を眺めながらのコーヒーブレイクが楽しめる。生苺のない夏場には、完熟苺のピューレを使ったケーキやソフトクリーム、「苺ババロア(350円)」などをどうぞ。県道25号線の小草トンネルを抜けると「黒潮本陣」・「黒潮工房」の看板が。小高い山を登り切った先にある、前者は温泉宿、後者は体験型レストランだ。黒潮工房ではカツオ代プラス500円で節取りを藁焼きする、「カツオのタタキ体験」ができる(要予約)。自分で焼いたできたてを、その場で食べられるのが最大の魅力。生のカツオがない冬場は体験もできないという潔さだ。


双名島
鬼ヶ島の鬼が大波で苦しむ久礼の人々のため、島を金棒に突き刺して運んできたものの、力尽きて海中に没した名残、なのだそう。
ところで双名島へ至る道中は山が海に迫る地形のため、海側がスリット状になった落石防止のトンネルが随所にある。F1モナコグランプリの気分が味わえる、かも…。

風工房
ベリーベリーパフェ(680円)と苺ショートケーキ(300円)。ケーキセットはドリンク代+260円~。ほかに苺シフォンケーキや苺チーズケーキ(ともに325円)も人気。
産直販売される採れたて苺は1,300円。
無添加いちごジャムは470円。
 

久礼大正町市場
久礼の食材がすべて集まる、と言ってもいいかも。新鮮な食材が安く買えるため、観光客にも人気のスポット。アーケードには大漁旗が踊る。

純米吟醸 純平
創業天明元(1781)年という「西岡酒造店」のイチ押し。1,890円(720ml)。ギャラリーでは青柳裕介「土佐の一本釣り」劇画展を常設。

 ふたたび久礼の町なかへ戻り、消防署を右折すると高知県下最古の酒蔵をギャラリーとして公開している「西岡酒造店」、左折すると採れたての青果が並ぶ「中土佐町農産物直販所」がある。そして町の中心と言えば町民の台所、「久礼大正町市場」。市場だけに営業時間は早朝からお昼ぐらいまでかと思いきや、ここはお昼から夕方までの営業。港から漁場が近く、早朝に出た船がお昼前に水揚げするからだそう。これも近海を流れる黒潮のたまものだろう。朝どれ・昼どれの新鮮な魚だけでなく、大きな文旦やお惣菜も売っていた。

 

カツオのタタキ定食
さすが鰹乃國。カツオのタタキはいろいろなお店で食べることができる。写真は黒潮工房のもの。小鉢と苺がついて980円。

 アーケードの中ほどにある「市場のめし屋浜ちゃん」では、名物のかつおどんぶり(750円)やタタキ定食を。その場で味わいたい!という方のために、店内で売っている干物は店頭の大きな七輪で焼いてくれる。ちなみに市場の他の店で買ってきた商品の持ち込みも可。また、市場の東入口に位置する「田中鮮魚店」ではおかず一品券が5枚ついた食券制の「久礼丼(1,000円)」を販売している。市場内の久礼丼協力店で「うまいもん」を自由にトッピングして、自分好みの丼が味わえるのだ。 刺身三昧にするか、干物中心で攻めるか、気分次第で盛りつけた丼は向かいの「田中の漁師小屋」でどうぞ。

 

クレティーヤ
「cafe do kuremon」の人気メニュー。地場産野菜とカツオで作ったメンチカツオを米粉の生地で巻いており、ファストフード感覚で食べられる。300円。

 八幡通り商店街では「岡村かまぼこ店」の「くれ天」が絶品。土産としても有名な久礼のじゃこ天だが、店頭で1枚売りもしてくれる。さらに大正町市場西入口正面には「cafe do kuremon(カフェ・ド・クレモン)」が。魚群が水面下にいることを意味する「なぶら」から名付けられた人気の「なぶらスープカレー」はカツオが入って800円。古民家カフェの「古久家(こくや)を曲がり、久礼八幡宮の向かいにある「高知屋」では名物「久礼のところてん」が食べられる。寒い季節にはうどんやたこ焼きも。また、この界隈では4月と12月に門前市も開かれる。

 八幡宮から海岸へ向かい、松林の中に鰹供養の碑とともにあるのが「土佐の一本釣り」の原作者、青柳裕介像。まるで静かに漁港を眺めているかのようだ。その松林や高い防波堤の向こう側にはかつお祭の会場でもある、ふるさと海岸が広がっている。取材したのは2月末の寒い日だったが、海はおだやかで春近しを思わせる「ひねもすのたり」な1日だった。

くれ天
作っている「岡村かまぼこ店」だけでなく、町内はもちろん須崎市の道の駅でも買える。
1枚70円。
写真は5枚入りの土産用。
 

中土佐町久礼までの交通

【JRで】

土佐久礼駅まで
高知駅から 約50分(特急)
窪川駅から 約20分(各停)

【自動車で】

高知自動車道・須崎道路 中土佐
I.C.から国道56号を通って約2km
 

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