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バリバリ通信

金毘羅参道を歩く

掲載日:2012年12月

金刀比羅宮と門前町
(香川県仲多度郡琴平町)

 平成24年11月某日。午前10時少し前にアンパンマン列車を降り、快晴のJR琴平駅に立つ。大正時代の北欧風建築である駅舎や跨線橋は昨年、国の登録有形文化財に指定された。なるほど荘厳な造りである。駅前広場右手の観光案内所では宿泊の斡旋や観光プランの相談に応じてくれるだけでなく、レンタサイクルの貸し出しも行っている。1日500円。

 象頭山に向かってまっすぐ歩くと最初の交差点にそびえ立つのが高燈籠。27.6メートル。その名の通り高さ日本一を誇る。昔は灯りが瀬戸内海を行き来する船からも見えたそうで、いつからともなく流し樽の風習が生まれた。航海の安全を祈って海上交通の守り神である金刀比羅宮に初穂料やお神酒を奉納したい、しかし自分は船の上、そこで思いの丈を見ず知らずの誰かに託すべく、奉納品を入れた樽に「奉納金刀比羅宮」と書かれた旗を立て、灯りを頼りに海に流す~流し樽とは自分の代わりにお参りしてもらおう、という代参の文化。同様に奉納品と道中の食費を飼い犬の首に巻き、見ず知らずの旅人に託す「こんぴら狗(いぬ)」という風習も江戸時代に生まれた。おおらかだった時代を感じさせる逸話である。

 

幸福の黄色いお守り+ミニこんぴら狗セット
御本宮と奥社の神札授与所で販売中(1,500 円)。

 大宮橋で金倉川を渡り、琴平郵便局を右に見て突き当たりを左折すると温泉旅館や飲食店、土産物店が並ぶ県道208号線。いったん表参道を通り過ぎ、鞘橋(さやばし)へと向かう。鞘橋は全国でも珍しい橋脚のない銅葺き屋根付きの木造橋。刀の鞘のように反ったアーチ型であることから名付けられた。洪水による何度かの流失を経て、明治2年に架け替えられたものが現在地に移築されている。普段は通行することができず、金刀比羅宮御大祭のときにのみ使用される。

 少し中心街方面に戻ると、観光バスの駐車場にひときわ大きな木が見えてきた。樹齢約350年と言われる天然記念物の大センダンである。今橋を渡り、琴平公民館の1階にある、琴平町立歴史民俗資料館へ。ここは1835(天保6)年に建立された金丸座があった場所。こんぴら歌舞伎や祭りに関する資料がたくさん収蔵されている。金丸座は現存する日本最古の芝居小屋として昭和45年に重要文化財の指定を受け、名称を旧金毘羅大芝居(金丸座)と改めた後、昭和47年から51年にかけて当地から坂を上ること約10分の中腹へと移築された。


一の坂から降りてくる駕籠タクシー
全国でもここだけという登山駕籠も利用してみてはどうだろう。大門までの往復6,800円(予約制)。登りだけなら5,300円。身体障害者など特別許可があれば旭社(595段)までの運行もできるそう。さらに自力で登るのが困難な方へは駅前から参拝登山バス「しあわせ号」が出ている。大門まで約10分、500円(予約制)。

厳魂神社(奥社)
ここが全1,368段のゴール。
休まず歩ける健脚の方なら麓から1時間ほど。ちなみに携帯電話の歩数計によれば、この日は31,268歩。距離にして23.75kmを歩いたことになるらしい。
 

 ところで道中、気になる看板を見つけた。『金毘羅大権現を祀る寺』。こんぴらさんは神仏習合の時代、真言宗象頭山松尾寺金光院の別名であり、民謡『金毘羅船々』に謡われたとおり象頭山金毘羅大権現と呼ばれていた。それが明治維新の廃仏毀釈によって強制廃寺、金刀比羅宮に改組させられた歴史がある。現在の松尾寺は当時の普門院が継承したもの、ということだった。松尾寺から下った正面が海と船のすべてがわかる、海の科学館。操舵室のシミュレータがあるほか、さまざまな船の模型や実物が展示してあった。中には懐かしい船の名前も多数見受けられ、子どもからオールドファンまで楽しめる。


五人百姓と加美代飴
大門をくぐると大きな傘を広げて座る左に3人、右に2人の女性たち。境内で唯一商売することを許された五人百姓だ。ここで売られる加美代飴(500円)は手作りのべっこう飴で、ハンマーが付属するほど堅く、そして甘い。

 さて、いよいよここからは本格的な登りになる。参道の両側に軒を並べる土産物店を見ながら歩き、大鳥居をくぐるとどこまでも続きそ うな石段が見えてきた。一の坂である。左手に朝夕の時刻を知らせる鼓楼、右手に金刀比羅本教を見ながら急坂を登り切ったところが大門。海の科学館からここまで普通に歩いて10分ほどだった。それでも背中や額には晩秋にも関わらず大粒の汗が…。

 大門から旭社まで約10分、加えて10分ほどで785段の御本宮まで到達したものの、奥社である厳魂(いづたま)神社へはさらに583段、つまり麓から合計1,368もの石段を登らねばならない。ざっと見たところ、奥社を参拝するのは御本宮への参拝客の1割程度だろうか。逡巡したあげく、なんとも弱々しい足取りで出発、30分を要して登坂に成功した。うっそうと茂る木々の紅葉が美しい。遠く瀬戸大橋まで眺められる絶景だが、視界は御本宮社殿前広場の方がより開けている。


名代灸まん
琴平土産と言えばこれ。15個入り1,050円。

 時計を見るとすでに13時半。今度は一気に麓まで下ることにする。途中におしゃれなガラス張りのカフェ&レストラン、資生堂パーラー「神椿」があるが、目指すはうどん作り体験(1,575円)ができる「中野うどん学校」。しかし残念ながら予約制で、この日の受付は終了していた。仕方なく、その場でぶっかけうどん350円を食す。同じ表参道では甘党なら「灸まん本舗石段や」、左利きなら清酒金陵で有名な西野金陵「金陵の郷」への立ち寄りをお勧めしたい。一ノ橋で再び金倉川を渡り、新町商店街へ。アーケード入口にある「平岡精肉店」は店頭で揚げる肉コロッケやミンチカツが地元の高校生にも人気。そしてもう1軒、抹茶や栗ぜんざいがおいしい「へんこつ屋」は、自分の想いを書に託せる店だ。部屋中所狭しと貼り付けられた半紙には、共感するものから応援したくなるもの、笑えるものまでそれぞれの想いが記されている。店を出て並び燈籠を眺めて歩き、駅へ戻る頃には辺りはすっかり夕闇に包まれていた。

 

琴平町までの交通

【電車で】

JR 琴平駅まで
 高松駅から約60分(快速・各停)
 多度津駅から約15分(各停)
 阿波池田駅から約25分(特急)
ことでん 琴平駅まで
 高松築港駅から約60分

【自動車で】

高松自動車道 善通寺I.C.から国道
319号、県道208号を通って約4km

 

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